「乳がんは恐くない!恐いのは貧乏だ!!」

「夫の月収10万、妻は乳がん」~貧乏夫婦乳がん治療奮闘記~

著者:スパリゾート井上&妻・玲子

茜新社

夫のスパリゾート井上さんは、福岡県のI市で奥さんと3歳の息子と暮らしている、フリーライター。名前の通り文章もユーモラスで、闘病記だけど明るく、夫婦仲のいい感じが伝わってきます。でも、山菜とったりタニシを食べたり、ほんとに日々の暮らしは苦しそう。二人が闘っているのは、乳がんなのか貧乏なのかわからないくらい。個人的に一番読み応えがあるのは、章ごとについてる毎月の収支状況。要は、闘病中の家計簿を、解説つきでつまびらかにしてくれているわけです。いろいろツッコミどころ満載の支出があったりして、面白いのもさることながら、闘病していると、こんな風にお金がでていくのかとリアルに教えてくれる貴重な記録になっています。あと、親戚が助けてくれたり、意外な収入もあったりして。

 著者の正直で恰好つけないスタンスは、夫婦の  性生活についての記述にも表れていて、治療で性欲が失われていく妻と、禁酒をして精力が回復していく夫とのすれ違いも描かれています。こういう話は、大事なのにあまり大っぴらに語ってくれる夫婦は少ないと思うので、参考になるんじゃないかと思います。

 乳がんは壮年期になりやすいがんで、夫は働き盛り、こどもは小さいということが多いです。夫たちもテンパってしまい、妻の支えになるどころか、すれ違ったり、別居や離婚にいたることもあります。今、がん患者の会はあちこちで開かれていますが、まだまだ家族の会は少ないですから、もう少し乳がんの妻を持つ男たちが、発言したり連帯する場がほしいなと思います。そして、乳がんや妻に対しての理解を深めていってくれたらいいですね。